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イラストレーター・白皙、描くことが苦しかった過去と描くことが人生になった現在

2024.07.17
  • 鈴木 樺恋

  • オバラ ミツフミ

  • 本人提供

目次
INFORMATION
イラストレーター
白皙
普段はアーティストのCDジャケットやMVなどの音楽コンテンツや、女性・乙女向けコンテンツのキャラクターデザイン、書籍のイラスト制作などをしています。男性イラストを描くことが多く、ファンタジーやスタイリッシュなテイストが得意です。

ひとくちに「クリエイター」といっても、描き出すクリエイションは色とりどり。その背景には、バッググラウンドや譲れないこだわり、そして個性がある。


私たちが愛する「あのイラスト」は、いったいどのような思考回路をたどり、どのような技術によって生み出されているのだろうか。


クリエイターたちが歩んできた人生に焦点を当て、自分好みの色でクリエイター人生を彩ってきたヒストリーを明らかにしていく連載「人生のふであと」。


今回のゲストは、アーティストのCDジャケット・MV・イメージイラストなどを手がけるイラストレーター・白皙さん。爽やか系から病み系まで、テイストを限定しないオールラウンダーなイラストレーターとして知られています。


現在に至るまでの過去を根掘り葉掘り聞いてみると、イラストとは無関係の会社で働かれていたり、睡眠時間を削ってイラストを描かれていたり、私たちの知らない下積み時代にたどり着きました。


彼女のクリエイター人生を支えてきたものとは——。白皙さんの“ふであと”をたどっていきます。

寝る間を惜しんで描いていた、下積み時代の話

──── 白皙さんがイラストを描きはじめたきっかけについて、教えてください。

 

鮮明に思い出されるのは、まだ幼稚園生だった頃、クレヨンで描いた絵を褒めてもらったことです。褒められたことが嬉しくて、絵を描くのが好きになりました。

 

祖父も父も絵を描くのが好きな人だったので、もしかしたら遺伝的なものもあるのかもしれません。ただ、絵を描く機会が多い分、褒められるというよりアドバイスをもらうことのほうが多くありましたが(笑)。

 

一方、祖母や母は対照的に、「大したもんだ」と褒めてくれました。

 

振り返ってみると、褒められて、アドバイスをもらって……と、絵の世界に入り込んでいく環境が整っていたのかもしれません。

 

──── 描いた絵は、家族以外にも見せていたのでしょうか。

 

小学生の頃から、雑誌にイラストを送っていました。当時はインターネットが今ほど普及しておらず、絵を載せる場所といったら、雑誌のイラスト募集コーナーだったんです。

 

自分の絵が雑誌に載るのがすごく嬉しくて、毎月投稿していました。

 

高校生になると、今度はイラストではなく、漫画を描くようになりました。もちろん描くだけでは飽き足らず、出版社に原稿を持ち込んでいましたよ。過去には一度、賞をいただたこともあります。

 

──── ええ、そうだったんですか!

 

それから真剣に漫画家を目指すようになり、担当の編集者さんが付いてくださって、デビューを目指す日々が始まりました。

 

しかし、必死で考えたプロットも、頑張って描いたネームも、GOサインが出ることはありませんでした。デビューへの道のりは、想像以上に険しかったのです。

 

この時期は、描くことを心から楽しめてはおらず、毎日が追い詰められているような感覚でした。

 

そんな苦しい時期に出会ったのが、「Pixiv」というイラスト投稿サイトです。

 

漫画家見習いとしては行き詰まっていましたが、ここでなら自分の絵を見てもらえるのではないかと、暗闇の中に光が差したことを今でも覚えています。

 

──── 漫画家を目指すのではなく、見てもらえるチャンスがあったイラストレーターを志したのですね。高校卒業後は、どのようなキャリアを?

 

高校卒業後は、実家から近い会社の事務に就職しました。

 

イラストの夢を諦めたわけではなく、イラストを仕事にするための準備としてです。いきなりイラストで食べていく自信がなかったので、まずはお金を貯めようと思いました。

 

日中は事務職として働き、家に帰ったらすぐに絵の練習をしていました。会社員は2年半続けましたが、「早くイラストで食べていけるようになるんだ!」と意気込んでいましたね。

 

会社員生活が自分には合っていなかったこともあり、フラストレーションを解消するかのように、夜遅くまで絵を描く毎日。寝る間も惜しんで描いていたので、絵で食べていけるようになった現在よりも、慌ただしい毎日を過ごしていました。

事務職から念願のイラストレーターへ

──── 会社員として働いていた白皙さんが、イラストレーターとしての活動を始めた理由を教えてください。

 

現在も一緒に活動しているアーティストの「VALSHE」が上京することを知り、私も一緒に着いていくことにしたんです。

 

会社員時代に、趣味でVALSHEとMVを制作したのがきっかけでずっと交流があり、「VALSHEと一緒ならきっと大丈夫だ」という自信がありました。VALSHEも、「白皙も一緒に」と事務所に伝えてくれたおかげで、東京でも共に活動できることが決まり、少なからず仕事を確保できている状態だったのです。

 

──── どのようにして、イラストレーターとしての活躍の場を広げていったのかも気になります。

 

はじめはVALSHEとの仕事が中心でしたが、Pixivで私のイラストを見てくださっていた方が、依頼をくれることもありました。

 

ターニングポイントになったのは、VALSHEのメジャーデビューです。私はVALSHEの専属イラストレーターとして、デビューするレコード会社に入社することになりました。

 

かつてはうまくいかなかった会社員生活でしたが、好きなことを仕事にしていたこともあり、とても充実した時間を過ごせました。イラストレーターとしての仕事だけでなく、ときにライブスタッフをやったり、撮影に同行したり、幅広い仕事に携われたのも肌に合っていたのだと思います。

 

退職するまでの8年間勤めましたが、思い返しても本当に実り多い時間でしたね。

 

──── 充実していた会社員生活を送られていたと思いますが、どうして退職を決意したのでしょうか。

 

会社員として働いていくうちに、「自分の力で勝負してみたい」という気持ちが強くなったのです。

 

人に恵まれた8年間だったので、迷いがありました。ただ、みなさんが独立を応援してくれたこともあり、思い切って挑戦することにしました。

 

振り返ってみると、期待よりも不安のほうが大きかった気がします。それまでは会社からお仕事をいただいていたので、本当に一人でやっていけるか分からなくて。

 

当時は「来年にはまた、会社員に戻っているかもしれない」なんてことも考えていました。

 

独立当初は、とにかく必死に、がむしゃらに、イラストを描き続けていましたね。

息の長い現役生活を支える、温故知新スタイル

──── 白皙さんは現在、イラストレータとして多方面で活躍されています。R11Rに所属するイラストレータとしても活動されていますが、どのような案件が印象に残っているでしょうか。

 

池袋PARCOさんと共催しているイベント「Emotions」に参加させていただいたことです。

 

PARCOさんのような大きい会場に自分の作品を展示していただく機会はそうありません。

 

それだけでも光栄なことなのに、SNSのフォロワーさんだけでなく、私のことを知らなかった方にも感想をいただけて、本当に嬉しかったです。

 

「Emotions」の魅力は、制約なく好きな絵が描けること。これまで2年連続で作品を展示していただきましたが、どちらにも、ここぞとばかりに自分らしさを盛り込みました。

 

──── 「Emotions」に展示した作品のこだわりポイントを教えてください。

 

第一回目の「Emotions183」は、大好きなゴシックの雰囲気を取り入れつつ、仕事ではあまり描かない顔のアップのイラストを制作しました。

 

翌年の「Emotions2023」は、以前から描いているオリジナルのキャラクターで参戦しました。かつては“ヤンデレ”の設定でしたが、今っぽい言葉でいえば“地雷系”です。共通点を見出して、うまくマッシュアップした作品に仕上げられたと思います。

 

彼が持っているピンクのサイリウムは、もともと違うものでした。展示するにあたって変更することになってしまったのですが、かえって印象的になり、個人的に気に入っています。怪我の功名ってやつですね(笑)。

 

──── ヤンデレと地雷系をマッシュアップされたそうですが、イラストを描く際は、トレンドも考慮されているのでしょうか。

 

私はそうしています。息の長いイラストレーターになるには、トレンドや新しい技術を取り入れていく必要があると思っているからです。

 

年齢を重ねていくと、どうしても手癖で描いてしまいがち。発想も凝り固まっていきます。

 

温故知新じゃないですが、新しさに触れることで、感性が死なずにいられると思うので、これからもトレンドはしっかり追っていくつもりです。

 

──── トレンドはどのようにキャッチアップされているのでしょうか。

 

これといって特別なことはしていませんが、SNSは日常的にチェックしています。イラストのトレンドもそうですが、ファッションやメイクなども追っていますね。

 

ただ、はやりものに乗っかるだけでは、大勢の一人になってしまう。そうならないよう、ときめいたものをいかに自分らしい絵柄に落とし込むかは、試行錯誤の連続です。

 

見方を変えれば、すべてが創作の種になる

──── ご自身のイラストを通して、ファンのみなさんに感じてほしいことはありますか。

 

自分が見て、綺麗だとか、好きだなと思えるものを描きたいと思っているので、みなさんにも同じ気持ちになっていただけたら嬉しいです。

 

例えばなにかの作品を見た時に、胸を打たれたり、忘れられないものになった経験ってみなさんあると思うんです。私は絵からたくさんの感動をもらったぶん、自分の作品にも少しでもそういったものを届けられるよう、心を込めて制作しています。

 

──── これから挑戦してみたいお仕事や、目指しているイラストレーター像があれば教えてください。

 

ゲームのキャラクターデザインに興味があります。以前からファンタジーな世界観のゲームが好きなので、機会があれば携わってみたいです。

 

あとは……ドラゴンを描いてみたいですね。趣味の制作では何度も描いていますが、お仕事で描く機会がなかったので。

 

私が憧れているのは、倉花千夏さんです。彼女はジャンルを横断してキャラクターデザインを手掛けていて、その姿がカッコよく映るので、私もいずれはジャンルレスなイラストレーターになれたらと思っています。

 

──── 最後になりますが、これからイラストレーターをこれから志す方にメッセージをお願いします。

 

まずは、自分の“好き”や、描くことを楽しむ気持ちを忘れないでほしいです。

 

私は過去に、絵を描くことが苦しくなってしまった過去があります。でも、苦しむために絵を描き始めたわけではありません。

 

きっと誰しも、創作の原点は楽しむ気持ちだったはず。その気持ちを忘れないことが、何よりも大切です。

 

また、イラストに直接的には関係がないと感じられる日常の一コマも、後から創作に生きることがあります。私も、イラストとは一見関係のないようなライブスタッフの経験から、創作活動のヒントを得たことがありました。

 

そういう意味では、すべてが創作の種だと思って、アンテナを貼っておくことが大事かも知れません。

 

自分の持ち味になりそうなものを、自ら探しにいく姿勢をがあれば、自分にしかない武器を手に入れられると思います。

鈴木 樺恋

『でみたす!』プロジェクトマネージャー・編集者。コンテンツの企画・製作を担当。画塾で絵を学んだ経験から、「描く側のニーズも満たすコンテンツづくり」を目指しています。

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